以前、速報を記事化したレムデシビルの有効性を示した臨床試験の最終報告が論文化されました。
結果は速報とほぼ同様の内容でした。
【試験の方法】
対象となったのは成人のCOVID-19入院患者で下気道感染(肺炎)を呈している患者です。
対象者はレムデシビル群とプラセボ群を1:1に割り付けられました。
主要評価項目は回復までの期間で、回復とは「病院からの退院もしくは入院していても感染のコントロール目的のみに入院している状態」と定義されました。
【結果】
合計1062人の患者が登録されました。回復までの期間の中央値はレムデシビル投与群で10日間、プラセボ投与群では15日でした。
15日時点での症状改善もレムデシビル群で良好でした。15日時点での死亡率はレムデシビル投与群で6.7%、プラセボ投与群では11.9%でした。重篤な有害事象はレムデシビル群で24.6%、プラセボ群で31.6%認めました(注:有害事象は薬の副作用とは異なる概念のためプラセボでも起こります)。
【結論】
レムデシビルは下気道感染を伴うCOVID-19入院患者の回復までの期間をプラセボよりも早めました。
【主なDiscussionのポイント】
レムデシビルによって回復までの期間を短縮化しました。それだけでなく、レムデシビル群で呼吸不全を呈した患者の割合や治療開始前に酸素を必要としてなかった患者が新規に酸素を必要とする割合が少なかったため、レムデシビルによって重症化を防いでいたのかもしれません(注:主要評価項目ではないことに関しては、あくまで可能性としかいえません)
レムデシビルによる利益が最もみられたのは低用量の酸素を使用している群でした。ただし、他の群ではサンプルサイズが少ないため信頼区間が広くなっており、群間の違いについての解釈には注意が必要です。
本試験がレムデシビルの試験の中で最もサンプルサイズが大きく、登録も終了できた試験です(そのため信頼性が高いという意味です。中国の試験ではパンデミック終了のため臨床試験が途中で終了しています)。
本試験の前段階レポートをもって、FDAでは2020年5月1日にCOVID-19による入院患者に対するレムデシビルの使用を承認しました。
【個人的な意見】
以前に紹介した前段階レポートと同様の結果でした。現時点ではCOVID-19に対して有効性が示された唯一の抗ウイルス薬がレムデシビルです。
臨床試験が行われたのはアメリカで新型コロナウイルスが流行しだした初期の段階であり、混乱も大きかったようです。試験時点ではレムデしビル群でも死亡率が高いものの、現在に置き換えると治療法の向上(ステロイド治療の有効性が示されたことや管理方法の向上)によっておそらく死亡率にも変化があるものと思います。
いずれにしても、流行早期に大規模な第3相試験でプラセボと比較して有効性が示されたということは驚異的なことだと思います。
今後も新たな情報を引き続きアップデートして参ります。
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