「コロナのせいにしてみよう シャムズの話」を読んで

國松淳和先生著「コロナのせいにしてみよう シャムズの話」という本を読みました。タイトルが面白そうだったので、なんとなくAmazonで注文してみました。2時間くらいで気軽に読める本でした。

コロナのせいにしてみよう。シャムズの話
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この本は詳細に読み込むような本ではなく、一般の方向けに分かりやすい口語調で書かれています。一方で、医療従事者向けの話もあり、散りばめられた冗談の中にも診断の真髄のようなハッと気づかされることも多い本でした。

シャムズとはCIAMS(COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)のことで「新型コロナウイルス感染症が誘発する精神状態の変化」を意味する造語です。といっても、そんなに堅苦しく考えることが本書の主旨ではなく「コロナで変わってしまった人たち全般」というイメージです。厳密な定義を求めるものではありません(医師の中にはそういう人が多いとチクリと書かれています)。

シャムズは病名ではなく、従って診断するようなものでもありません。普段と違って、その人らしくないというところがシャムズのポイントであり、医者が診断するものではなく、周りの人が認識するものです。また、シャムズは「シャムズになってはいけない」「シャムズにならないように努力せねばならない」ものではありません。その理由は本書に書かれています。

コロナ前後で行動が変わってしまった人(本書の表現をかりると「シャムズってる人」)皆さんの周りにいるでしょうか?

行動の変化は悪い方向に限らず、急に「コロナで困っている人を助けよう!」といって特設サイトをつくる人もシャムズに入るようです。もしかしたら、このブログもシャムズの産物なのかもしれません(ブログ自体はコロナとは別の目的で始めたものですが、現状は完全にコロナブログになっています・・・)。

シャムズ自体は医学的な病名ではないのですが、それを説明するためには医学的なことに触れる必要があります。そのため、本の中には「転換」「心気妄想」「適応」など精神科的な用語を説明している部分もあります。

一般の方にとって、精神科の病気は「抑うつ」「不安」「興奮」「異常行動」などいかにも精神科の症状として表れるものというイメージがあると思います。しかし実際には「疲れやすい」「息切れがする」「めまいがする」といった身体的な症状で内科を受診することが多々あります。1つ1つ内科疾患が隠れていないかを丁寧に診療していきます。これは多くの場合、内科医にとっては難しいことではありません。

その反対に「精神科っぽい症状」で受診する「身体疾患」の患者さんも多くいます。内科医にとって身体疾患を見逃すことは恥ずかしいことですから、こちらの方が内科医にとっては悩ましい問題です(中には最初から精神科の問題として決めつけてしまう人もいますが・・・)。

本の中では「急にわけのわからない発言をして涙を流して救急外来を受診した人が、肺炎だった」エピソードを紹介しています。

ポイントは「精神面の変調は別に精神疾患から来ているわけではない」ということ「表面上目立つのは精神面の変調であり、本当に原因になっている身体疾患は隠れる」ということです。しかも、信じられないかもしれませんが現場では「よくあること」なのです(そういうことを経験したことがない内科医は気が付いていないだけでしょう)。だから「精神的におかしくなってしまったように見えたらまず、身体のことから来ていると考えるようにする」ことが正解だと本書には述べられています。私自身も普段から肝に銘じていることですが、改めて本書を読んで気が引き締められました。

・・・・といったような医療エピソードが主題の本ではありません。

大切なのは、自分の目の前に見えていることはあくまでも「表現型」なのだという普遍的なメッセージです。元気そうに見えている人の方が危険であると述べられています。

本書では「ごく自然の仮説」としてシャムズの種は不安から生まれると書かれています。不安そのものは別に悪いものではなく、健全な不安はむしろ必要なものです。コロナ禍で不安になるのは当たり前・健全なことです。問題なのは「不安の伝播力」で、その種は情報から生まれます。特にテレビは「認識できすぎてしまう」ため、不安増幅が大きいと述べられています。

シャムズへの対策として「声かけ」の重要性が述べられています。人間の生活には静かすぎる環境ではなく、ある程度の音があった方が良く、それには声かけが良いということです。

そんなことは当たり前のことだと思われるかもしれませんが、診療をしていると1人暮らし、夫婦2人暮らしの高齢者の方が「誰とも話すことなくテレビばかりみていてどんどん不安になる。考えることはコロナのことばかり。最近息切れがするけど、これはコロナですか?」というシャムズになっている方を非常に多く目にします。この対策は「雑談的会話をつくる」ことです。なるべく、たわいのない会話をすることが大切だと述べられています。

本の後半では「もとの世界に戻れるかではなく、コロナのせいにして、さっさと自分を操ろう」と述べられています。また「コロリハ」についても紹介されています。

なお、本書の最後には20ページほど、医療従事者のみなさん以外は絶対見ないで下さい!!というページがあります。こちらは医療従事者向けの内輪ネタのような構成です。

気軽に読める本ですので「自分もシャムズかも」「周りにシャムズっている人いるな」と感じた方はぜひご一読下さい。

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