前回紹介したファイザー社のワクチンに続いてモデルナ社のワクチンについても第3相試験の結果が報告されました。有効率は94.1%(95%信頼区間 89.3-96.8%)とファイザー社のワクチンと同様に非常に高い有効率が示されました。
前回の記事です。有効率などについてご参照下さい。
【試験の概要】
試験は2020年6月から8月にかけてアメリカの99の施設で行われました。
対象は18歳以上です。
ワクチンとプラセボ群を1:1に割り付け、それぞれ28日間隔で2回接種しました(ファイザー社のワクチンは21日間隔です)。
合計30240人(各群15120人ずつ)が参加しました。両群ともに96%以上が2回接種しました。
主要評価項目は「2回目接種後14日以降経過してからのCOVID-19の発症」です。
結果として2回目接種後14日以降にCOVID-19を発症したのはプラセボ群で185人(1000人年あたり56.5)、ワクチン群で11人(1000人年あたり3.3)で、有効率は94.1%(95%信頼区間 89.3-96.8%)でした。重症のCOVID-19はプラセボ群で30人(1人死亡)で、ワクチン群にはありませんでした。一過性の副反応を除き、安全性に特別の問題はありませんでした。
【詳細に】
参加者の年齢の平均は51.4歳、性別は約50%ずつでした。65歳以上は約25%でした。白人が約80%、黒人・アフリカンアメリカンが約10%、アジア人は約5%でした。
過敏症はワクチンで1.5%、プラセボで1.1%起こりました。倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛などの全身性の反応はワクチン2回目接種で約50%で認めました。これらはワクチン接種15時間後から起こり2日以内に治まる一過性のものでした。
2次的な評価項目では、接種1回目14日以降にCOVID-19を発症したのは、プラセボ群で225人、ワクチン群で11人、有効率95.2%(95%信頼区間91.2-97.4%)でした。
サブグループ解析では、ワクチンの予防効果は年齢、COVID-19の重症化に関与するような基礎疾患、性別、人種によらず認められました。
【論文内でのDiscussion】
今回の試験で対象となった人のうち、COVID-19の重症者となったのはすべてプラセボ群であったこと、つまりワクチンによって重症化を予防できる可能性が示されたのは特筆すべきことです。また、ワクチンを1回接種しただけでも高い予防効果があったことにも勇気づけられます。ただし試験はこれらを評価する目的で行われているわけではないので、結果の解釈には注意が必要です。
インフルエンザワクチンの有効率は59%程度とされており、今回のワクチンの有効率は非常に高いものです。ただし、この結果は短い観察期間によるものなので注意が必要です。また、マスクやソーシャルディスタンスなど他の要因にも影響を受けていることにも注意が必要です。現在も観察期間中であり、結果は変動していきます。
全体的には(ファイザー社の)BNT162b2と同様の有効性でした。妊婦や小児は今回の試験から除外されていますが、これらの人たちを対象とした試験が予定されています。
【個人的な意見】
ファイザー社のワクチンと同様にモデルナ社のワクチンも非常に高い有効率を示しました。また、特別な有害事象も認めませんでした。
このようなワクチンがわずか1年で次から次へと実用段階までもっていけるようになったことで、コロナの次に脅威となるような病原微生物への備えになるということが論文の最後に締めくくられています。ワクチンそのものは非常に早期にできており、その後、第1-3相の試験を終えることができたことは驚異的なことです。
ファイザー社のワクチンと同様に長期的なフォローアップができていないため、長期にわたる効果については不明ですが、非常に勇気づけられる結果だと思います。
また有用な論文が出ましたら随時アップデートしていきます。
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